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「マレーシアにおける長期滞在ビザ(MM2H)取得の在留邦人(セカンドホーマー)における介護・高齢者施設サービス等に係るニーズ調査について
 2015年(平成27年)6月14日投稿
 
(上のスライドの▼をクリックしてご覧ください。)
 
私が標記調査に参画するに至った経緯

 

  グローバル化や,先進国を中心とした高齢化の進展に伴い,リタイヤ後の生活を海外で過ごす日本人の数が増えてきました。中でもマレーシアは,外国人向けのロングステイビザ(MM2H)が導入された2001年以降,堅調に在留邦人数が増加し,現在もなお「日本人が住みたい国No.1」(一般財団法人ロングステイ財団調べ)を9年連続で更新しています。現在,マレーシアには約2万人の在留邦人がおり,そのうちの約半数が,クアラルンプールとその周辺都市に在住していると言われています。

こうしたセカンドホーマーの皆さんにとっては,日本人コミュニティの拡大に伴い,知人や友人に囲まれたマレーシアこそが,もはや「住み慣れた地域」となっています。そしてその多くの方々が可能な限りマレーシアでの生活の継続を希望している一方で,高齢化による老後の不安とともに,現地における日本人向けの介護・高齢者施設や関連サービスの充実が喫緊の課題となっていることを知りました。

 

  当然のことながら,セカンドホーマーの皆さんがマレーシアを生活の拠点としたことは,当事者の自由な意思決定によるものです。

  しかしながら,皆さんとの対話を通じ,

(1)  グローバル化した社会において,現役時代にさまざまな日本・マレーシア両国の連携強化に関する社会的

          な功績やご縁があり,現在のマレーシア在住を選択した方がいること,

(2)  発展するASEANにおいて,今後とも増加が見込まれる駐在邦人の間に老親の呼び寄せ問題が深刻化する懸

          念があること,

(3)  いつまでも多様で自分らしい生き方が認められる社会の実現に向けた課題,

(4)  既に日本国内においても介護職員の不足が深刻化しており,例え帰国しても十分な介護が受けられる保障

          がないという現状,

(5)  医療保険とは異なり,介護保険では保険料を納付していてマレーシアで類似のサービスの提供を受けても

          給付対象とはならないという公平性の観点からの問題提起,

(6)  先細りが懸念される日本の年金保障に対する一種の防衛策として移住している方が少なからずいること

    等があることを再認識し,もっと時代背景,社会状況に根差したアプローチが必要であると考えました。

 

   日本国内においては,介護保険は市町村が保険者となり,いわば「公」の存在のもとに地域の介護サービスの充実が図られています。 

   一方でこちらの日本人コミュニティでは,本質的な意味でこうした責任を担う「公」が存在しません。最近は,ヘルスケアビジネスの国際的な展開を見据え,邦人企業によるマレーシアでの事業展開も検討されつつありますが,セカンドホーマーの皆さんの間に,サービス内容のミスマッチにより,恩恵が受けられないといった懸念があることがわかりました。

 

   そこで私は,現地セカンドホーマーによる最大の互助組織であるセカンド・ホーム・クラブ(会長:阪本 恭彦 氏,会員数:約2,000名)の皆さんと連携し,今後のセカンドホーマーの皆さん全体の生活の質の向上と現状の政策的課題の抽出を目的として,標記調査に参画させていただくこととしました。

 

   本調査の設問は,約20項目からなり,

・マレーシアにて,介護を受けることにあった際の許容できる支出月額

・マレーシアの介護・高齢者施設において,必要とされる居住面積

・マレーシアで一層の充実が望まれる医療・介護サービスの種類ごとの優先順位

 等の個別具体的なもののほか,外国人による介護に関する意識,海外在留邦人における介護保険の適用といった中長期的な政策課題に関わる調査にまで及んでいます。

 調査結果の詳細データは今後,新聞取材と歩調を合わせ順次行っていく予定ですが,概要や政策項目に関わる要点につきましては,皆さんがこの問題を知っていただくためにもご紹介させていただきました。

 

  最後に,マレーシアに限らず,世界各地において在留邦人数は増加基調にあり,平成25年(2013年)10月1日現在の集計で,海外に在留する邦人の総数は,125万8,263人で,前年より8,686人(0.70%)の増加となり,本統計を開始した昭和43年以降過去最多となっています。(外務省:海外在留邦人数調査統計(平成26年要約版))

 

 一層のグローバル化と我が国の人口構造における高齢化の進展が,もはや不可逆的な状況にある以上,いわゆる「自己責任論」や滞在国の政府対応のみに依拠するのではなく,今後,皆さん自身の将来にとってももっと身近な問題になるかもしれないと考えています。

 また,視点を変えれば,こうした海外在留邦人への充実した介護サービスの提供は,それ自体が日本のヘルスケアビジネスの質の高さを直接,海外に向けて実証できる絶好の機会ともなるかもしれません。少し厳しく換言することをお許しいただくならば,「身近な自分たちの同胞を大切に介護できずして,海外は日本のヘルスケアに目を向けてくれない。」ことにもなりかねません。

   今後,海外在留邦人への介護サービスの提供と,現在,我が国にて画策されているヘルスケアビジネスの海外進出が,政策的にも戦略的に展開される日が到来することを願っています。

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